2026年6月に開催された「ガートナー アプリケーション・イノベーション&ビジネス・ソリューション サミット 2026」において、ソリューションアーキテクト本部 本部長 藤田 周がAI駆動開発について講演した模様をお伝えします。
2026年6月、GitLabは「ガートナー アプリケーション・イノベーション&ビジネス・ソリューション サミット 2026」に出展しました。このイベントにおいて、ソリューションアーキテクト本部 本部長 藤田 周がセッションに登壇。AI駆動開発の成功条件として、コンテキスト、セキュリティ、ガバナンスという3つの側面から紐解く内容についてお話しました。本記事では、その模様をレポートします。
藤田は、国内のユーザー系SIerで10年間にわたりエンジニアとしてシステム開発に携わった後、2008年より一貫してプリセールス畑を歩んできた経歴を持つ、いわば「現場を知るプロフェッショナル」。GitLabに入社後も、数多くのクライアントにソリューションを提案しています。講演の冒頭で藤田は、GitLabとガートナーの最新情報として、発表されたばかりの「2026年 Gartner® Magic Quadrant™ for DevSecOps Platforms」において、4年連続でリーダーの1社として評価されたことを紹介しました。
ソリューションアーキテクト本部 本部長 藤田 周

この日の講演テーマは、AI駆動開発。満員の来場者を集めたことからもわかるとおり、多くのIT関係者やビジネスリーダーがいま最も関心を持っている分野です。当初は懐疑的な見方もありましたが、2023年ごろから急速に浸透し、ソフトウェア開発の現場に大きな変化をもたらしています。藤田は、AIの進化によって企業が直面する新たな課題として、以下の3つを挙げました。まずは、人間の役割を変える「AIエージェントの台頭」、次に、未知の脅威が急増する「セキュリティのパラダイムシフト」、最後に、爆発的なトラフィックを生み出す「インフラ要件の変化」です。

ソフトウェア開発におけるAI活用は現在、自律的に動くAIエージェントが主戦場になっています。そして、このAIエージェントが、開発者の役割を根底から覆しつつあるのです。実際に、現時点で約86%の組織が「AIエージェントが生成したソースコードを本番環境のサービスに投入した経験がある」という調査結果が出ています。開発現場における仕事のやり方は大きく変わり、開発者の仕事は自らコードを書くのではなく、AIに対して適切な指示を出し、その成果物を評価する“指揮者”へとシフトしています。
人間がより戦略的な業務に集中できるようになる一方で、新たな課題も浮上しています。AI生成のコードはまだ完璧ではなく、人間による検証が必要になるのです。調査によると、66%の開発者は「AIの精度に不満」と回答。修正やデバッグに想定以上の時間がかかり、AIを使うことによる成果が期待を下回っている現状が浮かび上がってきます。さらに衝撃的なのは、AIの書いたコードを「強く信頼している」と答えた層がわずか3.1%にとどまっているという現実です。藤田は「AIが生成するコードをレビューする時間が、開発者にとって新たなボトルネックになっています」と警鐘を鳴らします。
AIの精度を高めるためには、AIに対して正しい文脈=コンテキストを与えることが不可欠です。しかしながら、開発ツールがサイロ化している環境では、AIに渡すための情報を各種のツールから集めてくるだけで多大な労力が発生します。この課題を解決するのが「GitLab Orbit」のナレッジグラフです。GitLab Orbitを利用すれば、仕様やソースコード、テスト結果といった関連情報を“芋づる式”に引っ張り出し、高精度なコンテキストとしてピンポイントでAIに提供できるようになります。なお、GitLab Orbitは正式リリース前ですが、段階的に提供を開始しています。こちらから、申し込みを受け付けています。

AIの恩恵を受けるのは、善人だけではありません。サイバー攻撃を仕掛ける脅威の生産者側も積極的にAIを活用しています。最先端のフロンティアモデルでは、脆弱性の発見能力が約90倍に跳ね上がるとも言われており、これまで見過ごされてきた脆弱性が大量に発見されるリスクはかなり高いと見込まれます。実際に、MozillaはWebブラウザFirefoxに最新のAIモデルを適用したところ、初期評価の段階で既知の10倍以上の脆弱性が発見されたことを明らかにしました。
こうした状況に対して藤田は「攻撃側の質と量とスピードがすべて圧倒的に高まります。人間が手作業で大量に発見される脆弱性に対応しようとすると、真っ先に人的リソースがパンクしてしまいます」と語り、会場に危機感を共有します。AIによる圧倒的なスケールの攻撃からシステムを守るために、防御側はそれに先んじてAIを活用し、脆弱性対応プロセスを自動化/省力化することが不可欠になるでしょう。
セキュリティ向上のために開発プロセスの改善を図るにあたって、GitLabのプラットフォームを活用している企業はスムーズに取り組めるでしょう。GitLabでは、組織横断的なセキュリティダッシュボードを活用し、AIによって大量のアラートから誤検知を自動的に判別・除外し、対応すべき脆弱性を絞り込むことができます。また、AIエージェントが脆弱性の特定から修正コードの生成、コミット、さらにはレビュー依頼までを自動化してくれます。そのほかさまざまな基本機能をセキュリティ強化のために活用することで、インシデントの発見から対応に至る一気通貫のプロセスを、現場の開発者の手を極力介さずに高速に回せるようになるのです。
藤田は、実際にGitLabユーザーがセキュリティ対応を高速化した事例も紹介しました。年間15万件のセキュリティアラートが発生する、社員数5万人規模のグローバル企業がGitLabを導入し、AIによる初期分析とフィルタリングを適用した結果、ノイズとなる誤検知を90%削減することに成功。さらに、対応が必要な脅威に対しても、AIエージェントを活用して1件あたり6〜8ドルのコストで自動修正プロセスを回せるようになったのです。セキュリティチームはわずか10人。少人数でも、大規模なエンタープライズのセキュリティ管理を見事に運用し続けています。

見過ごされがちですが、こうした状況になると、インフラ要件に求めることも変わってきます。AIエージェントは24時間×365日、眠ることなく並列で無限に働き続けます。これまでのITインフラは「人間が使うこと」を前提に設計されていましたが、AIによる絶え間ないアクセスにより、既存のインフラ設計では早晩限界に達することになるでしょう。藤田は、「これからはAIエージェントが使うことを前提としたインフラへと作り替える必要があります。いまの100倍クラスの負荷に耐えるインフラが必要で、そのためにはインフラの根本的な再設計が不可欠です」と話しました。
このアーキテクチャ変革は、人間に例えて「運動系」、「神経系」、「免疫系」という3つの概念に分けて考えるとわかりやすいでしょう。運動系は、必要なデータをピンポイントで取得する次世代のGitアーキテクチャ。神経系は、前述したGitLab Orbitのナレッジグラフが担います。そして免疫系は、スピードと安全性を両立させるために、基盤内部にセキュリティとガバナンスをあらかじめ組み込む仕組みです。これら3つの要素がGitLabという単一プラットフォーム上で整合性をもって動作することで、高負荷な環境下でも安定した開発体験を維持することができるでしょう。

GitLabは「AI-Native DevSecOps Platform」という方向性を打ち出しています。これは、開発プロジェクトの管理・設計から、コーディング、テスト、セキュリティ、デプロイ、モニタリングに至るソフトウェア開発ライフサイクルの全プロセスを包含するプラットフォームです。藤田は、「すべてのプロセスを1つのプラットフォームに組み込むということは、情報を1つのデータベースで保有するということです。これにより、複数のポイントソリューションをつなぎ合わせるだけでは決して実現できない価値を提供できます」と話します。
すべてのデータが1か所に集約されることで、ツール同士を接続するコストや、エンジニアが作業ごとにツールを切り替える労力が削減され、データの断絶もなくなります。つまり、プロジェクト全体を正確かつ横断的に可視化できるのです。もちろん、他のツールを排除するという意味ではありません。外部のAIエコシステムとも柔軟に連携するオープンな姿勢は保ちます。それでも、データモデルは1つであるべきで、「AIに対して、一貫性と精度の高いコンテキストを提供できる」ということが、GitLabの本質的な優位性と言えます。
ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)全体をAIで支援
実際に、AIには得意分野があり、GitLabも開発ライフサイクルの各フェーズに特化したAIエージェントやフローを提供しています。企画・設計を支援する「Planner」、コーディングを支援する「Software Development Flow」、構築・自動化を担う「CI/CD Expert」、脆弱性を監視・対応する「Security Analyst」、そして開発データを分析する「Data Analyst」など、そのラインナップは多岐にわたります。これらは単体で動くように見えますが、単一の統合データベースをバックボーンに持っています。そのため、各フェーズに最適化されたエージェントたちが正確なコンテキストを共有しながら、連携して動くことができるのです。
「成果物、コメント、監査情報など、すべてのデータを自在に引き出せる統合環境だからこそ、さまざまなAIが共通するコンテキストに基づいて連動する環境を実現できます」(藤田)。
適材適所のAI活用や厳しいセキュリティ要件の充足といった目的で、たとえばローカルLLMを使用することも可能です。GitLabはセルフホスト版も提供しており、厳格なセキュリティ基準を適用したいユーザーの中には、GitLabをプラットフォームとして各所に自社専用の閉域AIを適用し、成果を上げているケースもあります。

AI駆動開発を成功させるためのキーワードは、コンテキスト、セキュリティ、ガバナンスの3つに集約されます。単にAIツールを導入するのではなく、組織全体としてAIを使いこなし、業務プロセスそのものを自動化する体制へと昇華させることを視野に、改革を進めていくことが理想です。変革を成し遂げた企業こそ、高度化するサイバー脅威から身を守り、AIがもたらした新時代のビジネス環境を勝ち抜くことができます。
AI駆動開発3つの成功条件 〜コンテキスト・セキュリティ・ガバナンス〜
藤田は、「AI駆動開発を成功させる鍵は、コンテキスト、セキュリティ、ガバナンスの3点にあります。AIに適切なコンテキストを与え、セキュリティとガバナンスを開発プロセスに組み込み、それをスケール可能な基盤として支えることが、AI時代の開発には不可欠です」と講演を締めくくりました。
ノベルティのステッカー
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