公開:2026年8月18日
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Google Cloud Next Tokyo 26の来場者向けセッションに、GitLab合同会社、小松原つかさが登壇した模様をお伝えします。

Google Cloud Next Tokyo 26の来場者向けセッションに、GitLab合同会社 シニア ソリューション アーキテクト 小松原 つかさが登壇しましたので、その模様をお伝えします。
GitLabは2026年7月30,31日の2日間、東京ビッグサイトで開催された「Google Cloud Next Tokyo 26」に出展しました。初日の30日には、来場者向けセッションにGitLab合同会社 シニア ソリューション アーキテクト 小松原 つかさが登壇。本記事では、組織が安全かつ効率的にAIエージェントを内製化し、改善し続けるアプローチについて講演した小松原のセッションをレポートします。
講演の冒頭で小松原は、「今日会場に来てみると、たくさんのセッションがあって、どの部屋も満員。私のセッションはどうなるのだろうと、ハラハラドキドキしていました(笑)。皆さん、数あるセッションの中から選んでいただき、本当にありがとうございます!」と軽妙な語り口でセッション会場を埋め尽くした来場者の皆様にあいさつさせていただきました。
GitLab合同会社 ソリューションアーキテクト本部 シニア ソリューション アーキテクト 小松原 つかさ
小松原は、GitLabに入社以来、DevSecOps関連の仕事がメインです。つい先日まで、お客様の多くはCI/CDの導入やシフトレフトへの関心が強かったといいますが、ここ半年から1年でそれが大きく変わったといいます。
「ここ半年から1年はアプリケーション開発の効率性などについての問い合わせが急増していて、いまの話題の中心は生成AI関連です。今日は、この分野で皆さんが課題を感じていたり、疑問を持っていたりする内容について、お伝えしたいと考えています」(小松原)
会場の様子
ビジネスの現場では、「こんなエージェントがあればレポート作成が楽になるはず」、「問い合わせ対応を自動化したい」といったアイデアにあふれています。とはいえ、いくらすばらしい発想があったとしても、本番運用に乗せて実際に現場で使えるようにするためには、精度や安全性、および説明可能性が求められます。そして、AIの挙動と実装が済んでデリバリーしている機能との差分を管理し続けることは、かなり困難なプロセスです。
小松原は、内製化を推進しようとすると必ず出てくる大きな課題として、ビジネスユーザー、データサイエンティスト、エンジニアという3つの役割の間で生まれるギャップを、次のように指摘します。
「ビジネスユーザーは業務には詳しいのですが、そのアイデアを“本番品質”のシステムに落とし込む判断を下すという観点で見ると、現実的にはかなり難しいでしょう。データサイエンティストは検証やデータ分析は得意なのですが、業務要件を集めてまとめあげ、本番品質に仕上げる専門性は持っていません。エンジニアは、業務をシステムに実装できますが、アイデアやプロトタイプを渡されても、ガバナンスなど不可欠な要件を取り入れてゼロから作り直す羽目になります。結局、時間がかかるか、もしくは取り掛かっても途中でプロジェクトが雲散霧消してしまう……。3者の中で、どこまでできれば次に進んで良いか、という合意ラインが見えにくいのです」
GitLab合同会社 ソリューションアーキテクト本部 シニア ソリューション アーキテクト 小松原 つかさ
このギャップを解消するために、小松原は3者がGitLabを活用し、協働するアプローチを推奨します。
3者がそれぞれのEpicを主担当として推進する
具体的には、それぞれの得意とする分野で「やるべきこと」を切り分け、上図のように大きく3つのEpicを定義します。Epic 1とEpic 2で、業務チームとデータサイエンティストが、「このプロトタイプなら本番を目指せそうだ」と確信を持てるまで詰めます。そしてEpic 3でいよいよ実装。開発チームが本番品質のガバナンスを整え、CI/CDを通じて安全にリリースします。以下に、詳細を見ていきます。
Epic1では、Agent Studioを活用します。業務担当者がエージェントの目的や入出力を定義。「このように動く仕組みがあれば仕事が楽になる」という“感覚”を関係者間で共有します。この段階で、完璧な成果物は必要ありません。感覚を共有することが大切で、“とりあえず動くプロトタイプ”を作ります。なお、この段階のプロトタイプ作成は、対話型で作れるレベルで十分です。ビジネス知識と改善意欲があれば、AIやITの知識は必要ありません。
続くEpic2では、Notebookを使って検証します。Agent Studioで作ったプロトタイプの出力を実データを使って裏取りし、精度やバイアス、異常系の挙動をグラフやテーブルで見える化。Epic1を仕上げた業務チームと一緒にレビューします。「商談内容の正しい要約ができているかどうか」、「どのパターンで誤った回答が出やすいか」などを洗い出し、開発チームのエンジニアと「やりたいこと」を共有できるレベルに仕上げます。大切なのは、この段階でプロトタイプの精度や品質を上げようと過度に努力しないこと。現状のプロトタイプで問題になりそうなポイントをつかみ、開発チームに引き渡すことが求められます。
最後のEpic 3は仕上げ工程になります。エンジニアがADK(Agent Development Kit)を使って本番品質のエージェントを実装し、既存システムとの連携を含めて安全にリリースします。Epic1/2を「仕様書」として活用し、テストコードやCI/CDパイプライン、監視設定など、ライフサイクル全体をGitLab上で組み立てることになります。
小松原は、「便利な仕組みを作って終わりではなく、安全に運用し続けることを考慮に入れて開発することが大切です」と語ります。「エージェント開発では、どれだけ賢く答えてくれるか、という面ばかり注目されます。しかし、実務になると、どの質問には答えないべきか、どこでブレーキを踏むべきか、というガードレールが同様に重要なのです」。
GitLab合同会社 ソリューションアーキテクト本部 シニアソリューションアーキテクト 小松原 つかさ
ガードレールは、入力側と出力側のどちらにも設置します。入力側では、「業務目的と無関係な雑談には答えない」、「危険・不適切なリクエストには回答を返さない」、「参照可能なデータソースを限定して情報漏洩リスクを下げる」など。一方の出力側では、「モデルが生成した回答を出力する前に個人情報をマスキングできているかどうか再確認する」などです。
たとえば、ADKには、生成AIからレスポンスを受信した直後に実行し、内容の監査を行う「after_model_callback」というコールバック関数があります。この関数を使えばレスポンス内容の修正やマスキングも実行できるため、後付けで安全対策を差し込めることは魅力です。CI/CDでは、単体テストや結合テストに加え、「危険な質問への応答がブロックされているか」などガバナンス関連のテストをCIの一部として実行させる施策も有効になるでしょう。
小松原は、「モニタリングから改善、再デプロイというループを止めないことが、内製化を成功させる鍵になります」と話します。
幸いなことに、GitLabはプラットフォームであり、SSOT(Single Source of Truth:信頼できる唯一の情報源)として機能します。3つのEpicはGitLab上で親子関係としてリンクされ、すべてのやりとりは、Epic1、2の段階から保存されます。巨大なプロジェクトであれば、別途Issueを作って Epicに紐づけて記録できるため、詳細な内容も残ります。Epic3になっても、保守工程に移っても、個々のIssueやマージリクエストだけでなく、プロジェクトのすべてを遡って確認できることになります。
小松原が、「だれが、どのデータや検証結果をもとに、これでいこうと決めたのか、を後からたどれるようになります。これって、結構大事なことですよね」と話すと会場の雰囲気が緩みました。
GitLab合同会社 ソリューションアーキテクト本部 シニアソリューションアーキテクト 小松原 つかさ
この日の講演では、あえてガードレールを設けなければどうなるのかを示すデモも披露しました。奈良出身の小松原が、エージェントに対し『必ず関西弁(~やわ、ほんまに、等)で応答してください』と指示を出し、わざと制御を外した状態を実演したのです。結果は、こうなりました。
関西人からすると、さまざまな地域の方言が混在するなど、突っ込みどころが色々と……(笑)
デモとしては盛り上がり、会場からは笑いも起きましたが、小松原は「実運用では危うい面もあります」と釘を刺し、「業務とは関係のない方向にどんどん話が広がってしまう可能性も…(笑)。どこまでが許容範囲で、どこからがNGなのかを明白にしなければいけません」と、制御不能な事態を防ぐためのセーフティネットの重要性について改めて強調しました。
GitLab合同会社 ソリューションアーキテクト本部 シニアソリューションアーキテクト 小松原 つかさ
今回の講演タイトルは、「GitLabで実現するGemini Enterpriseエージェント開発の内製化」ですが、小松原は“裏テーマ”についても会場にシェアしました。
AIを触っていると、時が経つにつれて挙動が変わったり、今まで答えてくれていたことに答えてくれなくなったりします。エージェント開発におけるコンプライアンスや回答の深さのチューニングは、極めて重いテーマであり、この講演をそれについて考えるきっかけにしてほしいという思いです。
小松原は、「AIを取り巻く環境は常に変化し、まだ答えは存在しません。AIが行き過ぎた返答をして現場を混乱させても困りますし、セーブしすぎた返答ではだれも使ってくれないかもしれません。ですから、これからもこのような機会を通じて、最新の状況を皆さんに伝えていきたいと考えています」と語りました。次の機会も、ぜひお楽しみに。
Ask the Speakerでの様子。多くの方とお話させていただきました。
ブースの様子
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